こんにちは、獣医師の和田です。
マリンワールド海の中道では、衰弱した野生のウミガメのレスキューを行っています。今回は今年の夏に行った事例に関してお伝えしたいと思います。
(レスキューは獣医師と魚類担当複数名で担当しています。)
レスキューしたのはアオウミガメ、タイマイ1個体ずつで、衰弱した状態で発見されています。当館で検査・治療を行い、療養させ、しっかりと元気になったことを確認し、2個体とも9月に海へ帰しています。
1個体ずつ経過を紹介しようと思います。
まずは推定2歳のアオウミガメです。
7月に福津市の海岸に打ちあがっているのを発見され、当館に運び込まれました。
この個体はひどく痩せていて、脱水も重度でした。恐らく数日まったく食べ物を口にしていなかったと思われます。
レントゲン検査によって甲羅に折れてしまっている部分が複数確認されました。何らかの原因でケガを負い、餌が食べられないような状態になったのでしょう。
毎日点滴や注射による治療を行っていると、そのうち活力が上がってきてプールの中でしっかり泳げるようになりました。保護して1週間程度で少しずつ餌も食べるようになり、その後もりもり食べたおかげで、海へ返す頃には痩せも改善されました。
放流時は一切振り返らず、一目散に海に帰っていきました。
次は推定2歳のタイマイです。
8月に福津市の海岸にて、漁網が絡まってしまい浮いている状態で発見されました。
漁網はすぐに除去され、その後当館に輸送しましたが、網は左の肩部分に巻き付いていたため左腕が壊死していました。壊死した組織をそのままにすると毒素が体に回って死んでしまう可能性があります。ウミガメは片腕がなくても問題なく遊泳できるので、手術によって左腕は切断しました。
手術の後もタイマイは餌もしっかり食べて片腕での遊泳にも慣れたので、野生復帰に問題ないと判断し放流しました。
タイマイも一切振り返らず海へ返っていきました。
療養中にタイマイの便の中から多くのプラスチックごみが出てきました。一部消化不良を起こしていたような様子もあり、海に流れているプラスチックごみは、見えないところで生き物たちに負担をかけています。悲しいことに、腕に絡まっていた漁網も含めて、このタイマイは海ごみの影響で健康状態が悪化したと予測されます。
私たちのウミガメレスキューはこれからも続きます。
もしマリンワールド周辺の海岸で衰弱したウミガメを発見した場合はご連絡ください。
ウミガメの詳しい位置情報や、その場の写真などを撮影しておいていただければスタッフがいちはやく発見することができますので、情報提供いただけますと幸いです。
獣医師 和田 夏海