マリンワールド海の中道

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2018.12.24

30年の軌跡 Vol.29

【いのちを繋ぐ】

土井 翠(運営本部 営業部 営業担当)

2012年1月25日12:35のラッコ食事タイムのときです。

朝まで食欲旺盛だったマリンが全く近寄ってきませんでした。

(もうすぐ生まれる・・)そう思ってお客さまにお断りを入れ、食事タイムを中断した10分後、元気な産声をあげてラッコの赤ちゃんが誕生しました。

それはマリンにとって5回目の出産。今度こそ無事に大きくなりますように・・。

24時間付きっきりで観察を続ける中、授乳回数や毛づくろいの減少からわたしたちの願いは不安に変わり、生後10日目にマリンと隔離することを決めた時、その不安は絶対にこのいのちを守りたいという強い想いに変わりました。

その日から海洋動物課の16名の係員がお母さん代わりとなり、手探りでの初めての人工哺育が始まりました。

一番大変だったのは体温の調整です。上がりすぎてぐったりしたり、下がりすぎて硬直したり・・その度に大慌て。状態が急変して動物病院に入院したこともありました。

ミルク作りも一苦労でした。スルメイカとウチムラサキガイをフードプロセッサーでミンチ状にしたあと丁寧に裏ごしをして、ビタミン剤や整腸剤、生クリームなどを混ぜた特製ミルクはショーの合間にみんなで交代しながら作りました。

エサの食べ方や泳ぎ方、潜り方、毛づくろい。いろんなことを教えながら一緒に過ごした時間は、貴重な経験として今でもわたしの中に大切に残っています。

『マナ』

両親の名前から一文字ずつもらった大事な名前の赤ちゃんは今、6歳の立派なラッコに成長しました。現在、国内のラッコの飼育数は減少し続けています。わたしたちはみんなで守ったこのいのちを、マナ自身と一緒に明るい未来に繋げていきたいと思っています。

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