クラゲといえば海では嫌われ者ですが、水族館では癒しの象徴として、展示になくてはならない、大人気の展示生物です。
LEDの照明下で見るクラゲはなんともいえない美しさがあります。
半透明な体、規則正しい波動、魚にはない魅力があるのだと思います。
しかし、癒しのクラゲ展示は私たちにとっては苦労の連続でもあります。
その理由は飼育の難しさ、寿命の短さにあります。
ほぼ1年中開館しているマリンワールドでは、水槽内のクラゲは常に展示しておく必要があります。
海で簡単に採集してきて展示できることもありますが、そればかりではありません。どうしてもとれない時期や、また、採集できても寿命が短く、2週間ほどで簡単に死んでしまう種類もいます。
そこで、水族館内で繁殖させて常に展示できるようにするのですが、展示できるサイズに成長させたり、親の寿命を見越して繁殖時期を調整したりする難しさがあります。
また、毎日の水換えと生きたプランクトンの給餌、クーラーで水温を保つなど飼育のポイントがいくつかあり、どれが欠けても上手くいきません。
運のいいことに、マリンワールドの裏側にはクラゲの宝庫である、「博多湾」があります。ここでは季節によって現れる種類は違いますが、1年で25種類ほどのクラゲが確認できています。(当館調べ)
担当者はそろそろ涼しくなったから、あのクラゲが来るぞ!暑くなったから今週は狙い目だ!など季節の変化に敏感になり、クラゲセンサーが働きます。
ゼラチン質のやわらかいクラゲを水ごと掬うためのひしゃくと、バケツを手に海に行きます。
半透明な体のクラゲを波立つ海で見つけるには、慣れが必要ですが、私たちはクラゲセンサーの目を働かせ、見逃さないよう海面を覗き込みます。
マリンワールド2Fの6つの水槽では、いつでもクラゲが見られるよう飼育係の終わりなき戦いが続きます。
魚類課 鈴木 泰也