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2026.5.25

「福岡県の水生昆虫」

お久しぶりです。はじめましての方はよろしくお願いします。魚類課で淡水生物を担当している勢村です。

前回は両生類、前々回は淡水魚についてお話ししましたが、今回は「水生昆虫」についてお話ししたいと思います。

水生昆虫とは幼虫期、成虫期のいずれかの段階で水生生活が必要な昆虫類のことをいいます。

幼虫期のみ水生生活を送るものを「半水生種」(例:トンボ・・・幼虫のヤゴは水生生活だが、成虫のトンボは陸生生活)、幼虫期、成虫期ともに水生生活を送るものを「真水生種」の2つに大別することができます。

水への関わり方も様々で、水面を利用するアメンボや水中で生活するゲンゴロウ、水際の湿った陸上が好きなメミズムシなど生活環境は多様です。

そんな水生昆虫は現在、真水生種だけでも国内に500種類以上、福岡県だけでも170種類以上が生息しています。今回はその一部をご紹介します。

タイコウチLaccotrephes japonensis

 

体長は約4㎝、国内で見られる水生昆虫類ではかなり大型です。自分の体長以上の獲物でも、鎌状に発達したムキムキでたくましい前肢を使って捕えます。

一昔前は福岡県内でもそれなりに見かけましたが、今ではめっきり見かけなくなりました。今から20年前、私が小学生だった頃、補助輪付きの自転車で汗だくになりながら、田んぼや池へ探しに行った想い出深い種でもあります。

 

オオアメンボ Aquarius elongatus

 

国内最大のアメンボです。その特徴はとにかくデカい! 圧倒的なサイズ感です。特にオスの脚は長く、広げると手のひらほどの大きさがあります。ゆったりと優雅に、水面を滑るように泳ぐ姿は時間を忘れて見入ってしまいます。また、その長い脚で水面に落ちてきた昆虫が起こす波を捉え、獲物の位置を探って捕え、体液を吸って食べてしまいます。 そして体感してほしいのは、匂い! アメンボをつまんで匂いを嗅ぐと、「カンロ飴」のような懐かしい甘い匂いを出します。「アメンボ」の名前の由来が、飴のような匂いを出す棒みたいな虫というのも納得です。※諸説あり

 

                   カスリケシカタビロアメンボ Microvelia kyushuensis

 

カタビロアメンボの仲間は福岡県内には8種類が生息しており、本種は体長約2㎜しかありません。他のアメンボ類と同じく水面で生活しており、水面に落ちてきた昆虫を捕食します。短い脚でちょこちょこと水面を動き回る姿はとても可愛らしいです。サイズは極小で見えにくいですが、背面の模様は大変美しく、ぜひ目を凝らして、水面に浮かぶ本種を見つけてみてください。

 

コバンムシ Ilyocoris cimicoides exclamationis 幼虫

コバンムシ Ilyocoris cimicoides exclamationis 成虫

 

緑色の体色が美しい水生カメムシです。カメムシと言っても臭い匂いは出しません。幼虫期は目が赤く翅(はね)がありませんが、成虫になると翅(はね)が生え、飛翔も可能です。 現在、全国的に数を減らしており、九州では福岡県内1か所のため池でしか見ることができなくなり、もはや風前の灯です。 なお、本種は種の保存法に基づく特定第二種国内希少野生動植物種に指定され、売買が禁止されています。また、福岡県では希少野生動植物保護条例に基づく指定希少野生動植物になっているため、無許可での採集も禁止されています。 マリンワールドでは許可のもと生息域外保全を行い、保護増殖に取り組んでいます。

 

シマゲンゴロウHydaticus bowringii

 

ヒマワリの種の様な見た目をしている中型のゲンゴロウです。大変美しく、可愛らしい種で私の大好きなゲンゴロウのひとつです。 現在、福岡県では絶滅危惧種IA類(近い将来絶滅の危険性が極めて高い)に選定されており、かなり希少なゲンゴロウになってしまいました。見かけたら私にこっそり教えて下さい。

 

ゴマフガムシ Berosus punctipennis

 

名前の「ゴマフ」は、前翅(ぜんし→前ばねのこと)にある黒いゴマのような模様という意味で、ゴマフアザラシと一緒の由来です。ということでアザラシ級に可愛いガムシと覚えてください。 福岡県では少しレアなガムシで、よくよく見ると体色は緑ぽくもあり綺麗な虫です。 指でつまむと「キュッキュッ」と羽と腹部をこすり合わせて音を出します。

 

 

キボシチビコツブゲンゴロウ Neohydrocoptus bivittis

 

個人的に福岡県珍ゲンゴロウのひとつで、なんと言ったら分かりませんが、汚いけど綺麗? いい感じに汚い? 環境に生息しています。福岡県内でも局地的に暮らす希少なゲンゴロウです。 ゲンゴロウ類は水面へ呼吸をしに上がってこなければならないのに対し、本種は水中にある植物の茎に尾端(びたん→腹部の先端)を差し込み、植物内の空気で呼吸するという凄技を持っています。 黄色と黒の体色もゴージャスでカッコいいです。

 

 

タガメKirkaldyia deyrolli

ゲンゴロウCybister chinensis

 

最後は、タガメとゲンゴロウです。言わずと知れた水生昆虫界の二大スターです。しかし、この二種の福岡県内での確実な生息地は長らく確認されていません。 タガメは県内某所での捕獲情報や、散発的な採集例があるものの、安定して見つかっていません。またゲンゴロウに至っては、現在福岡県では「絶滅」となっています。個人的にはまだ県内のどこかで生き残ってくれていると信じて探していますが、大変厳しい状況です。この二種も見かけたら、私にこっそり教えて下さい。

と、ここまで福岡県の水生昆虫の一部を紹介しましたが、まだまだ語り足りません。

またいずれ機会があればお話ししたいと思います。

そして、マリンワールドでは季節によって水生昆虫を展示することもあります。その時はぜひ、じっくり観察して興味を持っていただけると嬉しいです。

それではこの辺で失礼します。ありがとうございました。

 

魚類課 勢村天珠

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