こんにちは!魚類課2階担当の大野です。
私は2階の「奄美のサンゴ礁」というエリアを担当しており、奄美大島の海に暮らす魚たちを展示しています。
今回はその奄美大島に生物観察に行ってきました!…といっても、今回の目的生物は主に山と川の生きもの。「水族館の飼育員なのに、なんで山?」と思ったそこのあなた!
じつはこれには深いわけがあります。
奄美大島の約80%は山地。周囲の温暖な海が発生させた雨雲がたくさんの雨をもたらすことで豊かな森林環境が作られ、そうした高温多湿の環境下で生きものたちは独自の進化を遂げてきました。そのため奄美大島だけに暮らす固有種や絶滅危惧種などが非常に多く暮らしており、「東洋のガラパゴス」とも呼ばれるほど生物多様性が魅力の島なんです。
そんな素晴らしい島の生きものを展示する飼育員として、「海だけでなく山や川の生きものが実際に暮らしているところを見て、今後の展示に活かせれば」という思いから今回の生物観察に行くこととなりました。
それでは本題に入りますが、長くなりそうなのでこのブログでは山の生きものの観察記のみご紹介します!
今回行ったのは5月末。奄美大島はちょうど梅雨入りした時期で、たくさんの生きものが活発になるまさに生物観察のベストシーズン!
山に暮らす生きものの多くは夜行性のため、主な活動は夜に行いました。生きものに詳しい現地の方に案内していただき、期待で胸を膨らませつつ街から少し離れた林道に入りました。
(奄美大島では生物保護に関するいくつかのルールがあります。もし奄美で生きものを見てみたいという方はしっかりとルールを守ったうえでご安全にお願いいたします。ガイド付きのナイトツアーなども開催されていますので、チェックしてみてください!)
さて林道をゆっくり進むこと数分で、第一生きもの発見!
苔の生えた斜面にいたのはアマミサソリモドキです。見た目こそサソリに似ていますがまったく別の生きもので、危険を感じるとおしりから酸っぱい臭いがする液体を出して威嚇します。

サソリモドキ
サソリモドキを見た後少し歩いていると…で、出た~!
こちらはハブではなくヒメハブ。ハブよりも体は小さく、かまれても被害は少ないと言われますが、こちらもれっきとした毒ヘビですので遠目から優しく観察です。
梅雨時期は特にハブが見られる季節なのですが、気温が低かったせいかハブを見ることはできませんでした。

ヒメハブ
続いて水が溜まっているところを観察しているとアマミシリケンイモリがたくさん。水のある場所にはわんさか泳いでいるので、すぐに見つけることができます。

アマミシリケンイモリ
その周辺ではハロウェルアマガエル、リュウキュウカジカガエル、ヒメアマガエルたちの合唱が聞こえていて、木の枝でじっとする様子や、まだオタマジャクシの名残がある小さな個体も見ることができました。

カジカベビー
再び林道に戻って進んでいくと、私がずっと見てみたかった生きもの①がいました。
ヒャンという日本では珍しいコブラの仲間です。なかなかお目にかかれないレアな生きものなのでたくさん写真を撮りましたが、興奮しすぎてほとんどぶれていました(泣)

ヒャン
さらに別の林道に行ってみる見られる生きものがガラッと変わりました。
アマミノクロウサギ、リュウキュウイノシシの子ども、アマミトゲネズミなどが林道に出てきていましたが、どれもすぐに逃げてしまうため写真にはおさめられず…。
昼間によく鳴いているリュウキュウアカショウビンやルリカケスなどが木の枝の上で休んでいる姿、夜になると美しい鳴き声を出すリュウキュウコノハズクの姿も見ることができました。

リュウキュウアカショウビン
そして私がずっと見てみたかった生きもの②を発見!
日本最大のネズミの仲間、アマミケナガネズミです。私が見かけた2個体はどちらも電線を歩いていて、木に飛び移れるところを探しながら器用に綱渡りをしていました。こちらも興奮のあまり動画しか撮っておらず、遠目のスクリーンショットで失礼します…(笑)

アマミケナガネズミ
また、別日の昼間にはトカゲの仲間やカタツムリなどを探しに行きました。
天気に恵まれず残念ながら目的のトカゲは見ることができませんでしたが、カタツムリの仲間は何種類か見ることができました。

ケマイマイの仲間

大型マイマイ
このように普段見られないレア種が見られたり、大抵見つかる生きものが見つからなかったりと生物観察としてはまずまずの成果でしたが、梅雨時期の奄美大島を大いに感じることができました。ですがまだまだ見たい生きもの制覇には程遠いので、また違う季節に行ってみたいですね。
そのうち奄美大島の山の生きものも展示できるように頑張っていきますので、皆さま乞うご期待!
魚類課 大野 花歩