マリンワールド海の中道

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2019.8.12

深海生物が水槽に入るまで

マリンワールドのおすすめの水槽のひとつ、「九州の深海の生物」は「外洋大水槽」の裏側に回るとご覧いただけます。

今回はここで展示している深海の生物たちが、どのように水槽までやって来るのかをご紹介します。

 

そもそも「深海」とは水深200mより深い海の事を言います。もちろん人が簡単に行けるような世界ではありません。しかし、日本各地には深海の生物を専門で捕獲している漁師さんがたくさんいらっしゃいます。その漁師さんの船に便乗して仕掛けに掛かった深海の生物を生きたまま、もしくは標本用に持ち帰っています。

 

例年これらの生物を宮崎県や長崎県の漁師さんと共に収集していますが、今年の春に静岡県の駿河湾にて収集を行いました。九州の深海にもいるけれど、なかなか捕れない深海生物を求めて、マリンワールド史上初のチャレンジです!

「日本一深い湾」として有名な駿河湾は、海底の地形が急激に深くなる「海溝」で、その深さはなんと2500m!~そこで生活する生き物は何だろう?そしてどんな生き物にお目にかかれるだろう?~想像するとワクワクドキドキが止まりませんでした!

 

あらかじめ、学生の頃お世話になった漁師さんに船に乗せていただけるようお願いして、2019年4月に福岡から陸路で延べ12時間かけて現地に向かいました。

駿河湾で漁師さんが行っている「深海底曳き網漁」は、海底に網を沈め船で網を引きずりながら採集する方法です。船は夜中に出港し12時間の漁を終え港に帰ってきます。

 

これが網に入った深海生物!

 

船の上では網に入った生物を回収し、すぐに氷で冷やした海水の中に入れ、低い水温を一定に保ちます。常に水温を測定し、1℃以上変化しないようにその都度入れる氷の量を調整します。また、酸欠にならないように酸素の量も把握して調節します。これらの作業は神経を使う上、波で揺れる船の上では足元もおぼつかなく、すんなりと作業もできません。また、漁の途中に船上で死んでしまうものも多いので、生きたまま港に持ち帰るのでさえ難しいのです。

 

船の上での深海生物の様子

 

なんと深海生物マニア垂涎モノ「メンダコ」の姿が!

 

無事港についた生物を車に乗せた水槽に移し、ここでも機械で低い水温を維持し続けます。翌日12時間かけマリンワールドに運び、裏の予備水槽に入れてさらに数日生物の様子を観察します。

そして、健康に生き延びた生物がついに皆様のご覧いただける展示水槽へと入っていくのです。

 

慎重に予備水槽へと搬入

 

一緒に持ち帰った標本用の生物は、種類を調べ、写真を撮って資料として残します。また、ホルマリンという保存用の溶液にいれて長期保存します。

今年の秋に深海の特別展を企画しており、これら集めた標本などを一挙大公開する予定で準備を進めています!私達が自ら海に出て集めた深海生物を是非間近でご覧下さい。

 

魚類課  牧 貴海

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