昨年4月から展示を開始したオシドリは、“おしどり夫婦”という言葉で知られていますが、実は毎年ペアの相手を変えるんです。けれども、10月頃~5月頃の繁殖期には、お互いに寄り添って、羽繕いするなど、とても仲睦まじい行動が見られます。

4月のある日、展示室に設置していた巣箱の中に待望の卵がありました。 しかし、朝から夕方まではメスはオスといちゃついており、だれも巣箱に入って卵を温める気配はなし・・・。なのに、朝に巣箱内を確認すると、日に日に卵の数は増えていきました。親が温めないと、卵は死んでしまうーーー、はたして卵の運命はいかに・・・・?

実は、この考えはオシドリの世界では間違いでした。オシドリは、卵を毎日1個ずつ産んでいき、すべてを産み揃えて、はじめて卵を抱き始めるのです。こうすることで、どの卵も同じように発生が進み、時を同じくしてヒナが一斉に生まれます。このシステムによって、母親は巣箱にとどまって残りの卵の世話をすることなく、巣外に出て、すべてのヒナのお世話ができるんです。 2026年5月11日に人工的に卵を温める装置のふ卵器に入れていた2卵から、そして5月15日の朝に、展示室に設置していた巣箱で母親が温めていた6卵から、合計8羽のヒナが無事に誕生しました。14日夕方には巣箱内からはヒナの鳴き声は確認できなかったので、夜の間に生まれたようです。15日の朝点検時に、母親に続いて、ヒナがピョンピョンと巣箱から元気に飛び出してきました。出てきたヒナは、母親について活発に動き回り、自力でエサを食べ、泳ぎ、可愛さ爆発でした。

翌16日朝には、裏でスタッフがお世話していたふ卵器生まれの2羽のヒナを合流させてみました。スタッフはハラハラしていましたが、完全な取り越し苦労! 放った2羽のヒナを見た途端、母親は鳴いて呼びかけ、スーッと迎えに近づき、一瞬で6羽のヒナと合流を果たしました。 その後のヒナの成長は順調で、母親はヒナをしっかり見守り、ヒナは自由奔放に動き回り、潜り、見る見るうちに大きく元気に成長していきました。

可愛い姿も30日、ヒナの大きさは親の2/3ほどとなり、顔や羽色もヒヨコカラーから母親と同じ色合いへと変化しつつあり、ヒナ感は日に日に無くなっていってます・・・。

一方、ヒナの育成に、オスは我れ関せず・・・、卵を温めることも、子の世話もせず、そして鮮やかな羽が抜けて見すぼらしいボロボロな姿になっていきました。

これは育児疲れでもなんでもなく、オスは繁殖期が終わると、メスにアピールするためにまとっていた鮮やかな羽を脱ぎ捨てる“換羽(かんう)”が始まります。これは、外敵から身を守りやすい環境に溶け込む姿、メスに似た地味な羽へと変わっていく生理現象です。この非繁殖期の地味な姿は、日食や月食、輝きを失ったという意味である “エクリプス” 羽と呼ばれています。 そして、秋風が吹き始める頃、オスは鮮やかなオレンジ色のある繁殖羽に衣替えし、モテ男目指して、次の繁殖期に備えます。 展示場は空間に限りがありますので、 残念ながら生まれたヒナの全てを飼育することが難しく、近い将来ヒナ8羽のうち6羽は、近くの動物園へ里子として移動させることが決まっています。期間限定になりますが、ワサワサと14羽もオシドリがいる様子を、是非見に来てくださいね。
魚類課 大西 拓
