福岡市には博多湾に注ぐ川が流れています。大都市にあることや水遊びは危険なため子ども達や大人にも、最近は身近とは言えない環境かもしれません。そんな普段は何気なく気にも留めない近所の川では、開発や水害対策の護岸工事によりいくつかの魚が生息できなくなってしまいましたが、現在でも絶滅が心配されている希少な魚が細々と暮らしています。
レッドデータブックは絶滅のおそれのある生き物の情報をまとめ、何年も生息確認できない種や、やや減っているなど絶滅の危険度をランクで紹介しています。レッドデータブックは環境省が発行する全国版だけでなく各県ごとにも発行されていて、福岡県レッドデータブック2014に掲載されている魚類は82種類。その中には、皆さんに身近なメダカ、標準和名「ミナミメダカ」も含まれています。昔からするとどこにでもいたメダカが絶滅しそうだとは思いもしなかったことでしょう。
水族館はレクレーションの要素も強いのですが、自然保護という大事な役目もあり、現在マリンワールドには福岡県レッドデータブックに載っている12種ほどの魚類を飼育、繁殖し、一部は啓発展示しています。これらの多くは春が産卵期のため、バックヤードの水槽では繁殖に向けて水温調整や栄養価のある餌、水質を保つための水換えなど飼育係ならでは仕事を行っている最中です。まもなく冬が終わり、春を迎え無事産卵できればまた命のバトンをつなぐことができます。
これからも展示を通じて川の中に暮らす生き物の情報を発信していきたいと思います。
魚類課 鈴木 泰也