【Ⅰ期オープンに向けて】
蛭田 密(元 展示部 部長)
恩師から、「至急Mさんに会ってもらえないか」これが始まりでした。
伊豆での生活をすべて整理し、4か月後に福岡市へ入りました。
仕事はイルカとアシカの担当、係長として働きはじめました。
開館は来年4月の予定。しかし、イルカの確保はゼロ。すでに和歌山県での漁は終り、残すは長崎県のみ。
「もしイルカが入手出来なかったら」といろいろな事が頭の中を駆け巡りました。
会社側には、最悪の事態も考えておいて下さいと念を押したが、非常に楽観的でした。
仮事務所で今か今かと待っていたら、漁協から30頭ぐらい捕獲したと電話が入りました。十数頭のイルカを確保し、経験ある水族館に協力頂き、佐賀県の小川島で新人係員とイルカの飼育訓練を開始。訓練期間は10か月間。
初夏から係員全員と寝食を共にした民宿生活、イルカ達との生活の始まり、休みはなく毎日イケス上に8~10時間。
新人係員・ベテラン経験者との混成集団でも、大きな目標に向かうと強い団結力が生まれてくるのをこの時実感しました。
新人係員もイルカ達も徐々に環境に慣れ、秋頃には共に大きく成長し頼もしくなっていました。
イルカ達の訓練レベルも上がり、次はいつイルカ達を水族館に輸送するか、開館までの訓練期間は何日必要か、ショー運営をどのように行うか等、全体を見ながら決定していかなければなりません。
最も寒い2月に行ったイルカ達の福岡へのトラック輸送を何とか無事終了し、翌日からはイルカ達の新プールでの馴らし訓練が始まると同時にショーシナリオに沿ったイルカの動きの確認、それに合った音楽の選定とナレーター訓練。あっという間に3月末になり残り2週間、どうやら形にはなってきました。
そしてオープン当日、スタッフには間違い失敗を気にせず、精一杯やろうと声をかけました。ショー終了後に目が潤みました。
スタッフから「大丈夫ですか」と声をかけられ、これまでの大変だったことが、嬉しさに変わりました。