皆さん初めまして。魚類課の登口です。
今回は名前が変わった魚たちを紹介します。『変わった』とは『変な』という意味ではなく『変更になった』という意味です。
生き物にはラテン語で表す『学名』と言う世界共通の名前があり、それに対応した日本全国共通の名前である『標準和名』があります。これは1種類につき1つずつ、名前が与えられています。そのなかで一度つけられた標準和名が変わったものがいます。2種類の魚が1種類に混同されていたり、別の種類だと思っていたものが実は同じ種類だったりと理由は様々です。
名前が変わると聞くとスズキやブリのような出世魚を思い浮かべる方もいるかもしれません。確かに呼び名が変わりますが、標準和名が変わっているわけではありません。
例えば、スズキは学名『Lateolabrax japonicus』標準和名『スズキ』です。大きさによって呼び名がセイゴやフッコと変わりますが、大きさが違っても標準和名は『スズキ』だけです。
なぜ今回このテーマを選んだかと言いますと、最近私が婿入りして名前が変わりました。名前が変わると書類や手続きなど大変なことがたくさんありました。そんな経緯があり同じ経験をした魚たちを紹介しようと思いました。
まずは水の森エリアにいるミナミメダカです。
以前は国内のメダカは標準和名『メダカ』の1種類だけでしたが、2012年に『キタノメダカ』と『ミナミメダカ』に分けられました。標準名前の通り北日本と南日本に生息する集団間で形態が異なるため、別種として区別されました。
このように身近でよく知られている魚でも、知らぬ間に名前が変わっている場合があります。

ミナミメダカ
外洋大水槽に入っている2種類のウツボも、標準和名が変更になりました。
1種類目はニセゴイシウツボです。白い体に黒い斑点が特徴的なウツボです。
以前は小さな黒い点のあるゴイシウツボと大きな黒い点のあるニセゴイシウツボの2種類がいるとされていましたが、実はこの2種類は成魚と幼魚、同じ種類だったのです。同じ魚に2つの標準和名があると困るので先に学名が決まっていた『ニセゴイシウツボ』に統一され、ニセでない本来の種類はなくなりました。
ニセゴイシウツボの写真
2種類目はゴボウウツボです。黒く細長い体が特徴で体長は2m近くあります。
当館でも以前はオナガウツボと紹介していましたが、形態の細かな違いなどから2020年に別の種類とされ新しく『ゴボウウツボ』言う標準和名が付けられました。
ゴボウウツボ
続いては外洋大水槽の裏側、深海水槽にいるチゴダラです。
沿岸に生息するチゴダラと深海に生息するエゾイソアイナメはよく似た2種と考えられていましたが、DNA解析によって2019年に同種とされ、先に名前が付けられていた『チゴダラ』で統一されました。

チゴダラ
この様に魚たちの名前は少しずつ変わる種もいますし、今後も名前が変更される可能性があります。生き物の標準和名が変わる時には、時間をかけて調査や研究、議論が行われます。名前には歴史があり、名は体を表す種類も多く、水族館に来た際には生き物たちの名前にも注目してください。
同じように名前が変わった私ですが、学名『Homo sapiens』標準和名『ヒト』であることは変わりません。そう考えるとヒトの名前が変わるのは大したことではないのかもしれませんね。
展示部魚類課 登口紀文
