こんにちは。
魚類課飼育員の東です。
皆さん今年の夏はクラゲを見ましたか?
海でぷかぷか浮いている姿や、砂浜に打ち上げられた悲しき姿を目にすることも多かったかもしれません。クラゲを見ると毒があって怖い、見た目が気持ち悪いと言うようなマイナスの印象があるのではないでしょうか?
私も昨年までは同じ気持ちでした。ですが昨年の12月からクラゲを担当することとなり、水槽で展示するためクラゲを育てたり、海で採集する間に段々と印象は変わっていきました。
今ではクラゲを見つけると嬉しくてたまりません。捕まえることが出来れば小躍りしてしまうほどです。
そんな私の採集道中膝クラゲをお話ししましょう。
注:
膝栗毛とは?
自分の膝を栗毛の馬に見立てて旅をすること。歩いて旅をするという意味。
採集道中膝クラゲとは?
自分の膝をクラゲの触手に見立てて採集に行くこと。クラゲのように足を伸ばして色々な場所へ採集にいく。という意味の私が作った造語です。クラゲ担当で使っている言葉ではなく、個人的に使っている言葉です。皆さんもクラゲを探しに行った時には、「今日膝クラゲ行ってきた」という風に使ってみて下さい。
まずは昨年の12月。冬の海にクラゲがいるイメージはないかもしれません。ですが冬の海にはたくさんの種類のクラゲが潜んでいます。夏のクラゲと違い体は小さく見つけるのは難しいのですが、その分捕まえた時の喜びはひとしおです。
水温10℃前後の冷たい海にはカラカサクラゲ、ソトエリクラゲ類の一種、タマゴフタツクラゲモドキがいました。肉眼では見分けがつかず、捕まえては顕微鏡で観察をしました。

ソトエリクラゲ
1月から3月は特に海水が冷たく、風や波も強い為クラゲを採集へ向かう足が遠くなります。そんな海で出会えるのは、皆さんが想像するクラゲとは少し違った形をしたクラゲたちです。クラゲといえば傘のような形を思い浮かべると思いますが、立方体に近い形をしたカミクラゲや球体に似たドフラインクラゲが見られます。ドフラインクラゲは時に水面を覆いつくすほど大量発生することもあります。

カミクラゲ
4月になると段々海水温が上がり海も賑やかになってきます。冬に比べて体の大きなクラゲが見られるようになってきます。Theクラゲの見た目をしたミズクラゲ、毒々しい見た目のアカクラゲなど皆さんもよく目にするクラゲたちが現れます。

アカクラゲ
普段はマリンワールド海の中道のすぐそばで採集をしているのですが、この日は福岡県大川市まで足を延ばしました。お目当てはマミズクラゲです。川や池などの淡水に生息する珍しいクラゲです。

マミズクラゲ
梅雨の間はクラゲを取りに行くことはありません。決して雨が嫌だからではありません。クラゲは体のほとんどが水分で海水と同じ重さです。普段は海面をふわふわしているクラゲ達は、雨が降って水面に真水の層ができると少し深い所へと潜ってしまいます。なので雨の日にクラゲを捕まえることは難しいです。濡れるのが嫌なわけではないですよ。
7月2日、この日は佐賀県鹿島市から船で有明海へと繰り出しアリアケビゼンクラゲを採集しました。例年、一ヶ月ほどで展示を終了してしまいますが、今回は56日間も展示することが出来ました!!お客様に巨大なアリアケビゼンクラゲの姿をたくさん見ていただけて大変嬉しかったです。

アリアケビゼンクラゲ
ギラギラと輝く水面に目を焼かれながら夏も採集を行います。昨日はたくさん居たクラゲも今日は一匹も見当たらなかったり、姿は見えるのに届かなったりもどかしい日々です。それでも綺麗なクラゲを展示するため海に出かけます。
萎んでしまったアリアケビゼンクラゲの代わりにスナイロビゼンクラゲの展示を開始しました。この2種は近い仲間でこちらも大型のクラゲです。

スナイロビゼンクラゲ
昼間に仕事でクラゲを採りにいき、仕事が終わって夜にクラゲを採りに行くこともありました。昼の明るい時間は沈み、夜に泳ぎだす夜行性のハナガサクラゲを採集出来ました。カラフルな見た目は強い毒を持っている!ということを警告しています。決して触ってはいけない危険なクラゲです。

ハナガサクラゲ
クラゲ担当になってから沢山のクラゲを捕まえ、展示することが出来ました。お客様にクラゲの魅力を少しでも伝えられるように、これからも足をクラゲのように伸ばして採集に励みたいと思います。これからも私の採集道中は続きます。
今回はご拝読ありがとうございました。

クラゲ採集道具
展示部魚類課 東 紀文